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アルティーリ千葉

ALTIRI CHIBA

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 100万人規模の政令指定都市である千葉市は、バスケットボールにもゆかりの深い都市だ。2018年6月のワールドカップ予選で、男子日本代表がリオオリンピック4位のオーストラリア代表を破った会場が千葉ポートアリーナだったことも、多くのファンが記憶しているのではないだろうか。

 今、あのときの熱狂を受け継ぎ、同じ会場をメインのホームアリーナとしているアルティーリ千葉のヘッドコーチを、当時オーストラリア代表を率いていたアンドレ・レマニスが務めている事実は、この地とバスケットボールの不思議な縁を感じさせる。

 2019年のワールドカップ本大会で、レマニスHCはオーストラリア代表を再び世界の4強に押し上げた。人とボールの動きを重んじるフロー・オフェンスと、相手のオフェンスを分断するディスラプティブなディフェンスは、そのまま現在のアルティーリ千葉の土台だ。

 B3でのクラブ創設初シーズンは37勝7敗(勝率.841)の2位でB2昇格決定戦に進出。決戦の舞台では、トライフープ岡山を100-69で撃破してB2昇格を決めた。

 世界でもトップクラスのコーチであるレマニスHCが、日本のクラブ、しかもB3の新規参入クラブで指揮を執る。これは国内の男子バスケットボール界の2021-22シーズン開幕前における最も衝撃的なニュースの一つだった。

 アルティーリ千葉はクラブ創設発表時に“THE GREAT HISTORY BEGINS(偉大なる歴史の始まり)”という力強いキャッチフレーズを掲げ、最短経路でB1に昇格して5年以内にその頂点を目指すというライジングストーリーを描いている。

チーム名のアルティーリはエスペラント語で「惹きつける」を意味する言葉だが、レマニスのHC就任はまさしく多くの人の目を惹きつけたはずだ。

 しかも衝撃的なクラブ発信はそこで止まらない。オフシーズンに続々と発表されたロスター11人もそうそうたるメンバーだったのだ。
最年長で元日本代表のシャープシューター岡田優介がいる。前シーズンに天皇杯を制した川崎ブレイブサンダースのシューターで、BリーグオールスターMVPの受賞歴もある大塚裕土もいる。ライジングゼファー福岡を2年間でB3からB1に昇格させ、茨城ロボッツを在籍した1シーズンに見事B2からB1に連れていった「昇格請負人」であり、東京2020オリンピックの3x3日本代表候補として最終選考まで粘った小林大祐も名を連ねている。

「偉大なる歴史の始まり」に名を刻んだ創設メンバーは、それぞれが強い特徴を持ち、様々な貢献を高いレベルでもたらせるタレントだった。

☆アルティーリ千葉創設時(2021-22シーズン)のロスター
#6 小林大祐
#8 紺野ニズベット翔
#9 藤本巧太
#10 岡田優介
#11 杉本慶
#13 レオ・ライオンズ(キャプテン)
#15 鶴田美勇士
#22 秋山 煕
#24 大塚裕土(キャプテン)
#30 イバン・ラベネル
#42 ケビン・コッツァー
※シーズンを通じて故障者への対応などで計17人がプレーした

 開幕前の2021年9月11日には、川崎市とどろきアリーナに遠征してB1の川崎ブレイブサンダースとプレシーズンゲームを戦った。ファンの前でプレーするのはこのときが初めてだ。

試合前に大塚が「川崎さんの日々の練習強度や取り組みを知っているからこそ、対抗とか互角にとかそういう言葉は一切頭に浮かびません」と話していたこの対戦は56-91の完敗に終わったが、大塚の連続3Pショットや藤本のハーフコートショットなどでアルティーリ千葉も見せ場を作った。

 B3レギュラーシーズンは、2021年10月9日・10日にOKBぎふ清流アリーナで行われた岐阜スゥープス相手の連勝でスタート。記念すべきクラブ初得点はライオンズのフリースローだった(2本とも成功)。その翌週末10月16日・17日には、千葉ポートアリーナにアイシン アレイオンズを迎え、初のホームゲームを行った。

 鮮やかなライティングや、プレーヤーと同じクラブカラーのユニフォームを着たパフォーミングサポーター(2022-23シーズンから「Aills」(エイルス)として活動)が場内を盛り上げる中、コロナ禍の厳しい状況にもかかわらず、GAME1当日は1,731人のファンが会場で熱戦に見入った。

クラブ始動からわずか数ヵ月だったこのとき、来場者の多くがすでにブラックネイビーのアイテムを身につけ、11人の戦士たちとともに戦う準備を整えていたことは、この日のうれしい驚きの一つだった。

 ホームコートでの初得点もライオンズ。小林からのパスで同点に追いつくショットだった。盾をイメージしたチームロゴがあしらわれたユニフォームが躍動し、最終的に83-72で勝利したこの試合では、大塚が25得点でスコアリングリーダーとなっている。

 アイシンとのGAME2にも勝利したアルティーリ千葉は、11月4日・5日のしながわシティ バスケットボールクラブとの対戦まで8連勝を飾る。ところがクラブとして7勝目を手にしたそのGAME1の第1Qにライオンズが左アキレス腱を断裂。共同キャプテンの一人がシーズン全休という事態に直面することとなってしまった。

その影響が色濃かった翌週の東京八王子ビートレインズとのGAME1が初黒星。その後5連勝と持ち直したものの、新戦力の外国籍選手との短期契約を繰り返して繋いだシーズン中盤戦は、思うようなチームプレーをなかなかできない難しい流れとなった。

 それでもレマニスHC指揮の下、アルティーリ千葉は勢いを維持。ラベネルとコッツァーを軸としたフロントラインの奮闘があり、バックコートでは杉本の安定したプレーメイクと並行してルーキー藤本も急成長。ウイングでは岡田、大塚、小林のベテラントリオが高確率のシューティングやオフェンスのフローを生み出す。

 シーズンと並行して行われた第97回天皇杯でも、3次ラウンドでB1のアルバルク東京に挑戦する機会を得るところまで駒を進めている。上位の激闘が続いたB3レギュラーシーズンでは、最終的に優勝した長崎ヴェルカとの4度の対戦で2勝2敗と互角の戦績を残した。

また、4月23日・24日には、B2昇格決定戦進出をかけて館山運動公園体育館で3位のベルテックス静岡との直接対決に臨み、GAME1を落としたもののGAME2でB2昇格決定戦行きを決めた。
最大22点差のビハインドを跳ね返してオーバータイムの末109-106で勝利したこの試合では、岡田がハーフタイム以降3Pショット7本を成功させ27得点を稼ぐ大活躍。
試合後「ここで(B2昇格決定戦進出を)決めるつもりで来ていました」と語った大塚の執念をチーム全体が表現したような勝利だった。

 トライフープ岡山を31点差で下した昨年5月28日のB2昇格決定戦では、クラブのロゴ入りTシャツやユニフォームを着て応援するスタイルが開幕時よりも広く深く浸透していた。
東京体育館のアリーナにブラックネイビーの波が揺れるような情景の中、チーム全体で3Pショットを28本中12本成功(成功率42.9%)させる快勝。24得点、11アシストのダブルダブルを記録した杉本の活躍も光った。

 偉大なる歴史の始まりがB2昇格で完結した後、レマニスHCは「今日のチームの戦いぶりが誇らしいです。長い旅路の中でチームも個々も成長を見せてくれました」とシーズンを総括している。