PARTNER STORY 2023-24
アルティーリ千葉の闘志と品格が体現するアスリート魂、建設業界のこれから、子どもたちの夢
アルティーリ千葉がB3リーグで産声を上げた2021-22シーズンに、いち早くパートナー参画を決めた企業の一つに株式会社石井シーリングがある。代表取締役を務める石井喜一は、クラブ創設当初の地域の情熱を知る筋金入りのA-xxであり、パートナー企業の経営者としての関係以上に応援に力を注ぐ人物だ。
本業は建築現場での防水、耐震、外装リフォームなどの工事。壁のコンクリートや配管のつなぎ目に柔軟性を持たせるシーリング材を入れ、クリーム状の接着剤を隙間に塗ってヘラで仕上げる作業などがイメージしやすいかもしれない。異物混入や水漏れ防止に加え、鉄骨を建てる段階で耐震性も担保する。最終段階の美観仕上げも範疇だ。役割が身近すぎて気づかれにくいが、災害大国日本の生活はこうした仕事なしには維持できない。受注範囲は、ビジネス街の大規模ビルから大学などの施設、戸建て住宅まで幅広い。現在36歳の石井自身、一級防水施工技能士の国家資格を持つ実務経験15年以上の職人。空港や複合都市開発に携わったこともある。社内には工事現場を安全に管理し、完成後のクオリティを約束するプロフェッショナルがそろう。
だからといって、世間一般に広く知られる存在ではない。なぜならアルティーリ千葉のホームゲームで企業看板を掲出する以外には、基本的に宣伝活動をしていないからだ。
しかし、仮に顧客がA-xxだったとしたら、初めて訪ねるときでも「あ! ここかぁ!」とすぐに見つけることができるだろう。エントランス前の駐車場に、ブラックネイビーのボディにシールドロゴをあしらった清涼飲料水の自動販売機が設置されているからだ。これを見た近隣の子どもたちが、オフィスから出てきた石井に「ねえねえ、アルティーリ千葉の人なの!?」と話しかけてきたこともあるという。応接間にもブラックネイビーのアイテムやポスターがきれいに飾られ、会社の公式サイトからは石井が観戦記を語るブログも発信しているのだから、子どもたちの見立てはあながち間違ってはいない。石井は確かに、それほどアルティーリ千葉に入れ込んでいる。
自身の選択肢にはなかったプロアスリートの世界へのエール
学生時代にバドミントンに熱中した石井は、バスケットボールのルールさえ知らなかった。アルティーリ千葉との出会いも、行きつけの店で偶然近しくなった知人との会話がきっかけだ。なぜ惹かれたのだろうか。
石井が語ったのは、「僕たちの世代はバドミントンだけで生きていける人はほとんどいなかったんですよね」という当時の時代背景だ。好きになって国内トップレベルの努力を重ねた挙句、その道での将来が見えない。そこに疑念を膨らませた経験を持つ石井のアスリート魂に、プロクラブとして偉大な歴史を作り、世界を魅了するというアルティーリ千葉のコンセプトは響いた。
それはアスリートとその周辺の人々に初志貫徹の道を開くプロジェクトでもある。情熱で満たされていたはずの学生時代に宿した疑念を、アルティーリ千葉はバスケットボールの世界で払いのけようとしているのか。だったら一緒に進みたい。石井自身、クラブ創設2年前の2019年に起業したばかり。「アルティーリ千葉がイチから始めるなら、ウチも一緒に大きくなっていきたい。創設シーズンは特に、そんなふうに一緒に戦っている感覚が強くありました」。アスリート魂に火がついた。
一緒に戦う。そう決めてホームゲームに通うようになると、ブラックネイビーの躍動に石井は魅了された。「これでB3なのかと思うようなクールさと、あえて強気な言葉を背負ってがむしゃらに戦うイメージ。落ち着いた雰囲気なのに、内面から闘志がにじみ出ているように感じましたね」。B3では特例的にバスケットLIVEが配信を行った長崎ヴェルカとのアウェイ決戦の会場にも、石井は乗り込んだ。「長崎では本当に胸を熱くして応援しました」とひとしきり振り返る言葉に激闘の記憶が躍る。
一緒に戦い、未来を切り開くパートナーシップを目指す
企業としては上述のとおり宣伝活動をしていない中で、あえて企業名アピールにつながるパートナーシップに着手した理由は、アスリートとしての情熱と別にもあった。キーワードは「オラオラ系」と「夢」だ。
石井が初めて建設業界に飛び込んだ15年以上前の時代には、全体的に雇用環境が一般の企業のように整備されておらず、雇用者と被雇用者の関係が不健全な状態だった。日払いの雇用形態で働く従業員に対する教育も十分行き届かないため、社会人としての姿勢を問われるような作業者のイメージが業界全体に定着していたのも事実だ。石井はそれが今も続いていると認識している。独立起業を決めたのも、自分の責任範疇でこの現状を変えたかったからだ。
「建設業界にはオラオラ系で汚いイメージがつきまとっています。僕はそう見られたくないし、実際にそうではない人たちがたくさんいるんですよ。仕事も真面目だし、思い入れも環境への配慮もある。地域の人々と一緒に生きる企業だと受け入れていただけるように、イメージを改善したいんです」
広告を打たない理由もこの背景に関係している。「同業者の中には建物の状態も見ないで『××万円以上かかりません』と謳う怪しいチラシのポスティングをする例があります。突然押しかけてきて、『今、近隣の工事でドローンを使っていて、お宅の屋根も映像に写っていたんですがかなり傷んでいますよ』と押し付けがましい営業をしたり」。それは真実でないことが多く、業界イメージを損なう要因にもなってしまう。
同じ手法で対抗する代わりに、石井は自社の仕事ぶりを知る人々の口コミで事業を拡大してきた。結局は、ウソのない誠実な仕事で人から喜んでもらい、信頼を積み重ねていくことが重要だと経験から知っている。アルティーリ千葉にはその姿勢に通じるクオリティを感じた。「内に秘めた闘志と品格があり、かっこ良く謙虚な姿勢があるからファンもクール。これを大事に広めていってくれれば、僕が建設業界でやりたいことにも重なるんです」。これがパートナーになったもう一つの理由だ
子どもたちに夢を届けたいという思いもある。「好きになったスポーツの一つの技術で生きるプロの姿を見ることで、本気でやれば必ず何かの形で実ると信じられる子がいると思うんです」。株式会社石井シーリングは、ほかのパートナーと共同で「ちば夢チャレンジ☆パスポート・プロジェクト」に参画している。この取り組みを通じてアルティーリ千葉のホームゲームに招待した15,000人を超える子どもたちの中に、かつての石井自身のような疑念を持たずに夢を描ける子が育つなら、ぜひともその手助けになりたいと思っている。
若き日のアスリート魂を呼び覚まし、建設業界のこれからと子どもたちの夢を前進させ、アルティーリ千葉とともに未来を追いかけたい。だから一緒に戦うと決めた。「今シーズンは優勝して、B.PREMIER参戦を決めてホップ・ステップ・ジャンプです。ファンも増えていくでしょう。今のA-xx、今のパートナー、今の選手たちがこれからの世代を先導していけるように。そう期待しています」。そう話す石井の笑顔と応接室を飾るブラックネイビーのアイテムを、窓から差し込む明るい陽射しが照らしている。